シジミプロジェクト

”ヤマトシジミを佐鳴湖に復活させよう”という目的で2008年3月から、浜松市環境保全課・県土木・学校・市民による「シジミプロジェクト」がスタートしました。
2010年現在、シジミ生存の為の調査を行っている段階で、わたしたち縄文楽校では、
都田川で採集したヤマトシジミを佐鳴湖実験場へ持ち込み、生存・繁殖が可能な環境を調べています。

佐鳴湖は本当に「汚い」?

間違い無く、汚濁しています。20世紀後半には既に日本の汚れた湖トップクラスに位置しており、2001年から6年間はなんと「日本一汚れた湖」でした。下水処理問題解決などの水質改善が試みられ、2007年以降はランクを一つ戻しましたが、依然として深刻な状況は続いています。

汚れの原因は主に「植物プランクトン」の大量発生です。これはつまり、工業廃水や廃棄物などによる化学物質の増加が原因ではないことも示しています。この「汚れ方」が、シジミプロジェクトでは大きな意味を持っています。

 

「汚れ」とは生態系の乱れのこと

水質汚濁の原因は「植物プランクトン」という生物です。わたしたち人間から見ると、虫や動物の大量発生が問題となることがありますね。ある生物・植物が異常繁殖し、うまい具合に連鎖を起こしていた生態系のバランスが崩れるということが、「汚濁」という言葉で説明されています。

「植物プランクトン」の大量発生の原因は、主に人間の生活排水に含まれる有機物の増加です。人間を含む動物の食料源を生成できるのはこの「植物プランクトン」であり、これが増える事が一概に生態系にとって悪だとは言えません。

佐鳴湖には、微生物などの死骸や排泄物が主な成分である「ヘドロ」が多く堆積しています。植物プランクトンが増加しても、食物連鎖は活発に行われます。しかしあるところで連鎖が頻繁に途切れる現象がおき、ヘドロが溜まり、湖は「汚濁」していきます。

 

なぜヤマトシジミなのか

もちろんヤマトシジミがこの「ヘドロ」を全て処理してくれるわけではありません。水質汚濁を改善するには、原因を取り除く他ないのです。しかしわたしたち人間の性格上、文明をいきなり絶つということは容易には実現できないでしょう。

けれども、近年環境問題への取り組みは着実に成果を上げ、なんとか人間が自然と共生出来る道は無いものかと模索するうち、数十年前に絶滅したと言われるこの「ヤマトシジミ」の生き方に教わるべき点が多い事に気づかされたのです。

これまでに分かったこと

2009年までの生存実験によると、「ヤマトシジミ」は佐鳴湖の水で生存・繁殖することが出来るようです。しかしこれはシジミをプラスチックケースに入れて網をかけ、極度の保護環境を作り出した結果であり、もし佐鳴湖に直接貝を撒いたとしても、食物連鎖に加わることは恐らく出来ません。

佐鳴湖には有機物の増加によって、動物、プランクトンなどが大量発生しました。それら強者の中において、ヤマトシジミは弱者と言えます。

もしもヤマトシジミが生存・繁殖出来る環境があれば、それは人間が目指すべき共生モデルと言えるかもしれません。

わたしたちはこの「ヤマトシジミ」の力を借りて勉強を重ねることで、どんな参考書よりも的確に、現代の環境問題についての知識を得る事が出来ると考えます。